こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。
新築やリフォーム後から「室内にいると鼻水・頭痛が続く」「でも外に出ると楽になる」という症状、花粉症や風邪と間違えやすいですよね。実は建材・家具から放出される化学物質(VOC)が原因の「シックハウス症候群」かもしれません。症状の特徴・原因物質一覧・花粉症との鑑別チャート・換気と空気清浄機の選び方まで、まとめて解説します。
シックハウス症候群とは?
シックハウス症候群とは、住宅内に発生する揮発性有機化合物(VOC)などの化学物質が原因で起きる、鼻水・頭痛・倦怠感といった健康被害の総称です。特定の疾患名ではなく、複数の症状が室内環境によって引き起こされる状態をまとめてそう呼んでいます。
1990年代に日本でも深刻な問題として認識されるようになり、2003年(平成15年)の建築基準法改正によって居室への24時間換気システム設置が義務付けられました。厚生労働省はホルムアルデヒドの室内濃度指針値を0.08ppm(100μg/m³)と定めています。
ただし規制対象はホルムアルデヒドと一部のVOCに限られており、家具・カーテン・生活用品から放出される物質は規制外のものも少なくありません。
(「新築=新しい=安全」というイメージが強いため、シックハウスが原因だと気づきにくいんですよね。これが受診のタイミングを遅らせる一因でもあります)
主な原因物質と発生源
VOCの中でも特に問題になりやすい物質と、どこから発生するかをまとめました。
| 物質名 | 主な発生源 | 特徴 |
|---|---|---|
| ホルムアルデヒド | 合板・フローリング・壁紙の接着剤 | 指針値0.08ppm。刺激臭あり |
| トルエン | 塗料・接着剤・防水材 | 揮発しやすく頭痛の原因になりやすい |
| キシレン | 塗料・ニス・シンナー | トルエンと同時に発生しやすい |
| エチルベンゼン | 塗料・プラスチック製品・接着剤 | キシレンとセットで検出されることが多い |
| スチレン | 断熱材(発泡スチロール系)・プラスチック | 入居直後に濃度が高くなりやすい |
(この表を見て「ウチの原因物質はコレだ!」とすぐ特定できる方は少ないと思います。まずは換気の徹底から入るのが現実的な第一歩です)
特に濃度が上がりやすい発生源として覚えておきたいものをリストにしました。
- フローリング・合板:ホルムアルデヒドを含む接着剤が使われることが多い
- 壁紙(クロス):接着剤由来のVOCが入居後しばらく放出される
- 新しい家具(ソファ・本棚・タンス):合板やウレタン素材から放出される
- カーテン・カーペット:防炎・防カビ加工に由来するVOCが含まれることがある
- 塗料・ニス・防水材:DIYリフォームでも注意が必要
入居・設置直後が最もVOC濃度が高く、3〜6ヶ月かけて徐々に低下していくのが一般的なパターンです。ただし室温が上がるほど揮発量が増えるため、夏場は再び症状が出やすくなります。
症状の特徴と見分け方
シックハウス症候群の症状で最も大切なサインは「室内にいるときに悪化し、外に出ると楽になる」ことです。花粉症や通年性アレルギー性鼻炎とよく似た症状が出るため、気づくのが遅れやすいです。
主な症状は以下のとおりです。
- 鼻水・鼻づまり(特定の部屋や時間帯でひどくなる)
- 目の充血・かゆみ
- 頭痛・頭重感
- 倦怠感・疲れやすさ
- のどの痛み・乾燥感
花粉症・アレルギー性鼻炎との鑑別チャート
| 確認ポイント | シックハウス症候群 | 花粉症 | 通年性アレルギー性鼻炎 |
|---|---|---|---|
| 症状が始まった時期 | 新築・リフォーム・引越し後 | 特定の花粉シーズン | 一年中(ダニ・カビと連動) |
| 症状が強くなる場所 | 室内(特定の部屋) | 屋外、帰宅後 | 室内(寝室・リビング周辺) |
| 外に出ると | 楽になる | 悪化する | あまり変わらない |
| 同居人の症状 | 複数人が同時に発症しやすい | 個人差あり | 個人差あり |
| 症状が改善する条件 | 換気・外出・転居で改善 | 花粉シーズン終了後 | アレルゲン除去後 |
花粉シーズンでもないのに室内でだけ症状が続く場合は、シックハウス症候群・ダニアレルギー・カビアレルギーのどれかが候補になります。症状が出る時間帯・部屋・外出後の変化を記録しておくと、受診時に医師に伝えやすくなります。
→花粉症とアレルギー性鼻炎の違いとは?症状・原因・治療法を徹底比較
何科を受診すればいい?
シックハウス症候群は「何科の問題か」が分かりにくく、受診が遅れがちです。症状や状況によって相談先を使い分けるのが得策です。
| 症状・状況 | 受診先 |
|---|---|
| 鼻水・鼻づまりが主な症状 | 耳鼻科(アレルギー検査も可能) |
| 頭痛・全身倦怠感が強い | 内科(血液検査・除外診断) |
| アレルギーかどうか確かめたい | アレルギー科 |
| 職場の建物で症状が出る | 産業医・職場の保健スタッフ |
| 微量の化学物質でも反応する | 化学物質過敏症(MCS)専門外来 |
耳鼻科か内科を受診するときは「新築・リフォーム後から症状が続いている」「室内でだけ症状が出て外に出ると楽になる」と伝えてください。アレルギー検査(IgE血液検査)でダニ・花粉・カビへの感作が否定されれば、化学物質による刺激反応の可能性を検討するきっかけになります。
化学物質過敏症(MCS)は、シックハウス症候群よりさらに微量の化学物質に反応する状態です。香料・排気ガス・プラスチック臭でも症状が出る場合はMCS専門外来への相談が必要になることがあります。
→寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)とは?花粉症・アレルギー性鼻炎との違いと対処法
自分でできる3つの対策
換気を正しく行う
VOC対策の基本は換気です。2003年の建築基準法改正により、居室に「2時間に1回以上の換気ができる」24時間換気システムの設置が義務付けられています。ところが省エネのためにスイッチをオフにしている家庭が多く、VOCが室内にこもりやすくなっています。
- 24時間換気システムは常時オンにしておく
- 窓開け換気は「対角線上に2か所」開けると空気が流れやすい
- 引越し直後・大型家具の搬入後は積極的に換気する
- 夏は室温上昇でVOCが揮発しやすくなるため、特に注意が必要
- 天気の悪い日や花粉の多い日も、24時間換気システムで換気量を確保する
空気清浄機の選び方(HEPAだけでは不十分)
VOC対策で多くの方が陥る落とし穴がここです。
HEPAフィルターだけではVOCはほぼ除去できません。
HEPAフィルターは花粉・ダニ・PM2.5などの「粒子状物質」の除去には優れていますが、VOCのような「気体状の物質」は素通りしてしまいます。VOC対策には、活性炭(カーボン)フィルター搭載の機種が必要です。
(「高性能な空気清浄機を置いているから大丈夫」と思っていた方、実は私もそのひとりでした。活性炭フィルターがなければ、VOCに対してはほぼ無力なんです)
選ぶときのチェックポイントは以下のとおりです。
- 活性炭フィルターが搭載されているか確認する
- 活性炭フィルターは消耗品なので交換頻度とコストも事前に把握しておく
- 使う部屋の広さに合った適用床面積の機種を選ぶ
- 24時間換気と空気清浄機は「どちらか一方」ではなく両方を使うことが前提
→花粉症対策に空気清浄機はどれがいい?選び方のポイントとおすすめ機種比較
建材・家具の選び方
これから新築・リフォームを検討している方、新しい家具を購入する方は以下のポイントを押さえておくと安心です。
F☆☆☆☆(フォースター)建材を確認する
JIS・JAS規格でホルムアルデヒド放散量の最高グレードを「F☆☆☆☆(フォースター)」といいます。フォースター建材は使用面積の制限なく使えます。リフォーム・新築の際は業者に確認しましょう。
低VOC塗料・水性接着剤を選ぶ
DIYリフォームでも塗料は「水性・低VOC」タイプを選ぶと室内濃度を抑えやすいです。ただし「無垢材だから安心」とは言い切れない点も覚えておいてください。使用する塗料や仕上げ剤によっては、無垢材でもVOCが生じることがあります。

特に注意が必要な方と改善しない場合の対応
子ども・妊婦・高齢者は、同じ濃度のVOCにさらされてもリスクが高まりやすいとされています。
- 子ども:神経系・免疫系が発達段階にあり、体重比で大人より多くの空気を吸い込む。同じ環境でも取り込む量が多くなりやすい
- 妊婦:胎児への影響が懸念されるため、大規模リフォームや新築直後の入居時期については産婦人科医に相談することをすすめます
- 高齢者:においを感知する能力が低下していることがあり、症状に気づきにくいケースがある
同居人の中で一人だけ症状が出ないからといって、室内のVOC濃度が安全とは断言できません。
換気を徹底しても症状が続く場合は、以下のステップを検討してください。
- VOC濃度の専門測定:環境計量証明機関に依頼し、ホルムアルデヒド・TVOC(総揮発性有機化合物)を測定する
- 医療機関でアレルギー検査:IgE検査でダニ・カビ等との複合要因を整理する
- 発生源の特定と除去:濃度の高い部屋・家具を特定し、新しい家具は先に別室で換気してから搬入する
- 住宅会社や建築士に相談:測定値が指針値を超えている場合は、建材の交換・補修を相談する
→カビアレルギーの症状・原因・対策完全ガイド|梅雨前に知っておきたい室内カビとアレルギー性鼻炎の関係
よくある質問
新築でもシックハウスになるの?
なります。2003年の建築基準法改正で24時間換気の義務化や一部VOCの規制は強化されましたが、家具・カーテン・生活用品由来のVOCは規制外のものが多いです。特に気密性の高い現代の住宅では換気が不十分になりやすく、新築だからこそ注意が必要な面があります。
花粉症の薬を飲んでも効かない…シックハウスの可能性ある?
抗ヒスタミン薬は花粉などへのIgE反応を抑える薬であり、VOCによる刺激症状には効きにくいことが多いです。「薬を飲んでも症状が続く」「室内でだけ症状が出る」という場合は、花粉症以外の原因も疑ってみるのが自然なステップです。耳鼻科か内科を受診し、室内環境との関連を伝えてみてください。
F☆☆☆☆建材なら全部安全?
ホルムアルデヒドの放散量については最高グレードですが、F☆☆☆☆はすべてのVOCをカバーする規格ではありません。トルエン・キシレンなど他の物質の放散量は別の方法で確認する必要があります。気になる場合は住宅会社に第三者機関による空気質測定の実施を相談してみてください。
どこで検査・測定できるの?
症状の確認は耳鼻科・アレルギー科で(IgE血液検査でダニ・カビ・花粉との鑑別が可能)。住宅の空気質測定は環境計量証明機関に依頼するとホルムアルデヒド・TVOCの濃度を数値で確認できます。自分で使える簡易測定キットもありますが、精度は参考程度にとどめるのが適切です。症状が重い・長引く場合は、測定結果を持参して医療機関を受診することをすすめます。
シックハウス症候群は花粉症と症状が似ているため、気づかないまま過ごしているケースが少なくありません。「室内でひどくなり、外に出ると楽になる」「新築・リフォーム後から始まった」という特徴があれば、まず24時間換気の稼働確認と積極的な窓開け換気から始めてみてください。
空気清浄機を選ぶなら活性炭フィルター搭載機種を。建材を選ぶならF☆☆☆☆を確認することを基本にしてください。症状が長引く・複数人が同時に発症している・子どもや妊婦がいる場合は、早めに耳鼻科か内科を受診し「室内環境が原因かもしれない」と伝えることが次の一手です。


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