こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。
アトピー性皮膚炎の管理は「保湿・清潔・悪化因子の除去」の3本柱が基本です。毎日の保湿と、ステロイド外用薬を医師の指示通りに使うことで、症状をコントロールできます。「ステロイドは怖い」と敬遠してしまうと、かえって皮膚の状態が悪化しやすいので注意が必要です。
アトピー性皮膚炎のスキンケア3原則
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下しているため、外からの刺激に過剰反応しやすい慢性の炎症性疾患です。根本的に管理していくためには、次の3つを並行して続けることが大切です。
「保湿」は皮膚のバリア機能を補い、乾燥と外部刺激から守ります。「清潔」は皮膚に付着したアレルゲンや汗を丁寧に洗い流すこと。「悪化因子の除去」は、汗・ダニ・摩擦・ストレスなど炎症を引き起こすものを減らすことです。
症状が落ち着いているときも、この3原則を継続することが再燃を防ぐカギになります。
保湿剤の種類と選び方
成分別の特徴を比較する
| 成分・種類 | 特徴 | 適しているシーン |
|---|---|---|
| ヘパリン類似物質(ヒルドイド等) | 保水力が高く、血行促進・皮膚修復を助ける | 乾燥が強い部位、乾燥を繰り返す部位 |
| セラミド含有クリーム | 皮膚のバリア機能を直接補う | 敏感肌、赤ちゃんの保湿 |
| 白色ワセリン | 刺激が少なく安価。水分蒸発を防ぐ | 口周り、傷ができやすい部位 |
| 尿素クリーム | 角質を柔らかくして保水力を高める | 手のひら・かかとなど角化した部位 |
ヘパリン類似物質は医師が処方するケースが多いですが、市販のヘパリン類似物質入りクリームも薬局で購入できます。子どもや敏感肌にはセラミド含有クリームかワセリンが使いやすい場合が多いです。
保湿剤を塗るタイミングと回数
入浴後5〜10分以内が最も効果的なタイミングです。この時間を過ぎると、皮膚の水分が急速に蒸発してしまいます。頻度は1日最低2回(朝と入浴後)が基本で、乾燥が強い冬や乾燥環境では3〜4回に増やすといいです。
(塗りすぎによる問題はほぼないので、かさつきを感じたらこまめに塗って大丈夫です。「何回まで」と上限を気にするより、乾いたら塗るの繰り返しが現実的です)
ステロイド外用薬の正しい使い方
ステロイドは「怖い薬」ではない
ステロイド外用薬への不安は根強く、「副作用が怖くて薄くしか塗れない」という方は少なくありません。ですが、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、適切な強さのものを正しい量で使うことが推奨されています。
「なんとなく怖いから弱めに塗る」は逆効果になりやすいです。炎症を中途半端にしか鎮められず、結果的に長期間塗り続けることになるからです。
(正直、「ステロイド」という名前のイメージはなかなか変わらないですよね。でも「怖いから薄く」が一番良くないというのは、皮膚科の先生がほぼ必ずおっしゃることです)
塗る量の目安:FTU(ファーストチューブユニット)
FTU(Finger-Tip Unit)は、チューブから人差し指の第一関節まで薬を出した量を「1FTU」と数える単位で、約0.5gに相当します。この1FTUが、大人の手のひら2枚分の面積に使う適切な量の目安です。
| 部位 | 目安のFTU数 |
|---|---|
| 顔・首全体 | 2〜3 FTU |
| 体幹(前面または後面それぞれ) | 7 FTU |
| 腕1本 | 3 FTU |
| 脚1本 | 6 FTU |
少なすぎると効果が出にくく、多すぎる必要もありません。「どれくらい塗ればいいか」が不安な場合は、皮膚科で確認するのが確実です。
ステロイドのランク
ステロイド外用薬は作用の強さで5ランクに分類されています(Strongest・Very Strong・Strong・Medium・Weak)。顔・首・陰部など皮膚が薄い部位には弱いランク、体幹の頑固な炎症には強いランクが使われます。医師が部位と症状に合わせて処方するため、自己判断で市販の弱い薬に変えるのは避けてください。
プロアクティブ療法とは
症状が落ち着いてからも、週2回程度ステロイド外用薬を塗り続けることで再燃を防ぐ治療法です。
以前は「症状があるときだけ使う(リアクティブ療法)」が主流でしたが、見た目がきれいになっても皮膚の中に炎症が残っているケースが多いことがわかってきました。週2回の維持塗布でそれを抑えることで、再悪化の頻度を減らします。主治医から指示されている場合は、「もうきれいだから」と自己判断でやめないことが大切です。

入浴のポイント
湯温はぬるめに設定する
熱いお湯はかゆみを増幅させます。38〜40℃のぬるま湯が目安です。入浴後は皮膚からの水分蒸発が速いので、保湿剤は5〜10分以内に塗りましょう。
石けんの選び方と洗い方
刺激の少ない弱酸性の石けんを選び、泡立てたものを手で優しく洗います。タオルでゴシゴシこするのは厳禁です。摩擦自体が炎症のトリガーになります。洗い残しも肌刺激になるので、すすぎはしっかり行ってください。
年齢別ケアのポイント
乳幼児・赤ちゃんのケア
爪が長いと引っかき傷が絶えなくなるため、こまめに切ることが重要です。衣類は肌ざわりの良い綿素材を選び、縫い目が皮膚に当たりにくいものがおすすめです。汗をかいたらこまめに拭き取り、気温が高い日は積極的に着替えさせましょう。
子ども(小学生以上)のケア
学校生活では汗・砂ぼこり・プールの塩素など悪化因子が増えます。帰宅後すぐにシャワーと保湿をルーティンにすると、症状の落ち着きが変わります。
(「めんどくさい」と言い始める年齢でもあります。子どもと一緒にケアの手順を習慣化してしまうと続けやすくなると聞きます。親が一緒にやってみせると案外効くそうです)
花粉シーズンに肌が荒れやすい場合は、花粉と皮膚症状の関係も確認してみてください。
→アトピー性皮膚炎と花粉症の関係|花粉で肌が悪化するメカニズムと季節別スキンケア対策
大人のケア
ストレスと睡眠不足は見落とされがちな悪化因子です。仕事の繁忙期に症状が悪化するパターンがある方は、生活リズムを整えることも治療の一環です。夏は汗、冬は乾燥と悪化ポイントが季節ごとに変わるので、それぞれ対策を調整しましょう。
受診のタイミングと病院選び
次のような状況では、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
- 市販の保湿剤を続けても改善しない
- 夜中にかゆくて何度も目が覚める
- 顔・首・手など目立つ部位に強い炎症がある
- 子どもの体重増加や睡眠に影響が出ている
皮膚科のほか、小児科(子どもの場合)やアレルギー科も選択肢になります。症状全体や生物学的製剤などの治療選択肢については、以下の記事で詳しく解説しています。
→アトピー性皮膚炎(アトピー)の症状・原因・治療法完全ガイド|ステロイド外用薬から生物学的製剤まで、日常スキンケアと最新治療を徹底解説
よくある質問
ステロイドは毎日塗ってもいいの?
症状がある期間は毎日使うことが基本です。「少し良くなったから」と中断すると再燃しやすくなります。症状が落ち着いてきたら、プロアクティブ療法への移行を主治医と相談してください。
保湿は1日何回すればいい?
最低1日2回(朝と入浴後)が目安です。冬場や乾燥環境では3〜4回に増やすと効果的です。塗りすぎによる問題はほぼないので、かさつきを感じたときに追加して問題ありません。
子どものアレルギーマーチが心配。どう対処すればいい?
アトピー性皮膚炎を持つ子どもは、食物アレルギー・気管支喘息・花粉症へと進む「アレルギーマーチ」のリスクがあります。乳幼児期からの保湿はアトピー性皮膚炎の管理に重要ですが、食物アレルギーの一次予防としての有効性は現時点では確立されていません(BEEP試験など複数のRCTで一次予防効果は確認されませんでした)。アレルギーマーチが心配な場合は、小児アレルギー科での定期的な評価を受けることが大切です。アレルギーマーチの全体像については、以下の記事も参考にしてください。
→アレルギーマーチとは?アトピー性皮膚炎から始まる子どものアレルギーの連鎖と予防策
かゆくて夜眠れないときはどうすればいい?
患部を冷やすとかゆみが和らぐことがあります。保湿剤が薄くなっていれば追加で塗ることも一手です。それでも眠れない夜が続くようであれば、炎症が十分に抑えられていない可能性があります。皮膚科で治療の見直しを相談してください。
まとめ
アトピー性皮膚炎のスキンケアは、毎日の積み重ねがすべてです。保湿剤で皮膚のバリアを補い、炎症には適切なステロイド外用薬を使い、症状が落ち着いてからもプロアクティブ療法で再燃を防ぐ。「完全になくすこと」より「悪化させない状態を保つこと」を目標にする視点が、長期コントロールへの近道です。
症状が強い・市販品では限界がある、と感じたら、迷わず皮膚科を受診してください。早めに適切な治療を始めるほど、症状のコントロールが安定しやすくなります。


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