食物アレルギーがある人の海外旅行完全ガイド|多言語アレルギーカード・機内食申請・現地緊急対応まで

Chef wearing gloves slices fresh salmon on a wooden cutting board in a professional kitchen. 花粉症

こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。

食物アレルギーがあっても、海外旅行は楽しめます。ただし「日本国内の常識」が通じない場面が多く、多言語アレルギーカード・航空会社への事前申請・エピペンの持ち込み手続きなど、出発前に済ませておくべきことがあります。この記事では、出発準備から現地緊急対応まで、時系列でまとめました。

出発前の準備:医師・エピペン・保険の確認から始める

主治医への相談と英文診断書

渡航先・旅行期間・持参薬を主治医に伝え、英文診断書(Medical Certificate)を作成してもらいましょう。記載してほしい内容は3点です。

  • アレルゲン食品名(具体的に)
  • 処方薬の名称と用量
  • エピペン携帯の必要性(処方されている場合)

英文診断書の作成には1〜2週間かかるケースがあります。出発の1ヶ月前には依頼しておくのが安心です。渡航前に自分のアレルギーの重症度や対象品目を改めて確認しておくと、医師への説明もスムーズになります。

→アレルギー血液検査の結果の見方完全ガイド|クラス・数値・IgE値の意味をわかりやすく解説

エピペンの処方と持参本数

海外ではエピペンを現地で補充できないことが多いため、旅行日数分+予備1〜2本を見込んで処方してもらいましょう。アナフィラキシーが起きた際は1本目を使用後に改善しない場合に2本目を使うため、最低でも2本が推奨されています。

有効期限の確認も出発前に忘れずに。保安検査や機内での保管方法は「航空会社への機内食申請とエピペン持参ルール」の項で詳しく解説します。

→エピペン(アドレナリン自己注射薬)完全ガイド|処方のもらい方・使い方・学校・職場での携帯と管理

旅行保険の確認ポイント

食物アレルギーがある場合、旅行保険で特に確認すべきは「疾病治療費の上限額」と「アナフィラキシー入院費の補償可否」です。

保険種別 アナフィラキシー入院 外来通院 処方薬費用
クレジットカード付帯(基本型) 補償あり(入院のみが多い) 対象外が多い 対象外
海外旅行保険(一般型) 補償あり 補償あり 補償あり
年間包括型 補償あり 補償あり 補償あり

米国や欧州の救急外来は費用が100万円を超えることがあります。疾病治療費の上限が1,000万円以上、かつキャッシュレス診療対応のプランを選ぶと緊急時に現地での立替払いが不要になります。

(クレジットカード付帯保険だけでカバーしようとするのは、食物アレルギー持ちには少しリスクが高いと感じています)

多言語アレルギーカードの作り方と例文テンプレート

レストランや屋台でアレルゲンを説明するためのカードを、渡航先の言語で作成しておくと安心です。以下の例文から該当するアレルゲンを[ ]内で選んで使えます。不要なものは消してください。

名刺サイズのラミネートカードに印刷して財布に入れておくか、スマートフォンのウィジェット・メモアプリに保存しておくのが実用的です。


英語(English)

I have a severe food allergy to: [peanuts / shrimp / eggs / milk / wheat / soba / tree nuts].
Even a small amount may cause anaphylaxis — a life-threatening reaction.
Please do not add these ingredients to my meal in any form.
I carry an EpiPen. In an emergency, please call an ambulance immediately.

中国語(中文)

我对 [花生 / 虾 / 鸡蛋 / 牛奶 / 小麦 / 荞麦 / 坚果] 严重过敏。
哪怕微量也可能引发危及生命的过敏性休克(anaphylaxis)。
请不要在我的餐食中添加任何以上食材,包括微量成分。
我携带肾上腺素自动注射器(EpiPen)。如有紧急情况,请立即呼叫救护车。

韓国語(한국어)

저는 [땅콩 / 새우 / 달걀 / 우유 / 밀 / 메밀 / 견과류]에 심각한 알레르기가 있습니다.
소량이라도 섭취하면 생명에 위협이 되는 아나필락시스가 발생할 수 있습니다.
제 음식에 이 재료들을 넣지 마십시오.
에피펜을 소지하고 있습니다. 응급 시 즉시 119에 연락해 주세요.

フランス語(Français)

Je suis sévèrement allergique à : [arachides / crevettes / œufs / lait / blé / sarrasin / noix].
Même une trace peut déclencher un choc anaphylactique pouvant être fatal.
Veuillez ne pas mettre ces ingrédients dans mon repas.
Je porte un auto-injecteur d'adrénaline (EpiPen). En urgence, appelez le 15 (SAMU).

タイ語(ภาษาไทย)

ฉันแพ้ [ถั่วลิสง / กุ้ง / ไข่ / นม / แป้งสาลี / บัควีท / ถั่วเปลือกแข็ง] อย่างรุนแรง
แม้แต่ปริมาณน้อยก็อาจทำให้เกิดอาการแพ้รุนแรงถึงชีวิต (anaphylaxis)
กรุณาอย่าใส่ส่วนผสมเหล่านี้ในอาหารของฉันเด็ดขาด
ฉันพก EpiPen ติดตัว กรุณาโทร 1669 ทันทีหากเกิดเหตุฉุกเฉิน

Chef chopping vegetables on a red cutting board in a professional kitchen.

航空会社への機内食申請とエピペン持参ルール

航空会社別申請比較

アレルギー対応ミールは事前申請が必要で、締め切りと方法は会社によって異なります。

航空会社 申請締め切り 申請方法 主な対応内容
ANA 出発48時間前まで ANA公式サイト「特別機内食申請」 特定15品目対応
JAL 出発24時間前まで JAL公式サイト「食事の事前予約」 特定15品目対応
ユナイテッド航空 出発24時間前まで 予約管理ページ内 グルテンフリー・乳製品フリー等
デルタ航空 出発24時間前まで Manage Trip内 ピーナッツフリー等
エミレーツ航空 出発48時間前まで 予約変更ページ内 ナッツフリー等

※上記は2026年9月時点の情報です。搭乗前に各航空会社の公式サイトでご確認ください。

乗り継ぎ便がある場合、区間ごとに別申請が必要なケースがあります。チェックイン時に口頭でも確認するのを習慣にしてください。また、アレルギー対応食でも交差汚染のリスクが完全にゼロになるわけではありません。

(申請を入れていても通常食が出てくることが現実にはあります。搭乗口でのダブルチェックは省かないようにしてください)

保安検査と機内保管

エピペンは機内持ち込み可能な医薬品ですが、保安検査でX線の対象になります。英語の医師証明書または処方箋を一緒に提示すると手続きがスムーズです。元の薬剤ラベルが貼付された状態で持参してください。

機内での保管は「貨物室ではなく手荷物として持ち込む」が基本です。エピペンの推奨保管温度は室温(15〜30℃)です(日本のエピペン添付文書に基づく)。凍結・直射日光・高温多湿は避けてください。貨物室は温度管理が難しく、推奨保管温度を外れるリスクがあるため、必ず機内持ち込みにしてください。

UAE・シンガポールなど薬事規制が厳しい国への渡航時は、事前に大使館または外務省の「海外安全情報」で自己注射薬の持ち込みルールを確認してください。規制内容は変わることがあるため、渡航直前の確認が確実です。

渡航先国別リスク食品と現地食品表示の読み方

渡航先別リスク食品マトリクス

渡航先 主なリスク食品 見落としやすいポイント
アメリカ ピーナッツ・木の実類 菓子・ドレッシング・エスニック料理に混入しやすい
フランス 乳製品・小麦 ソースやパンに必ずバターか小麦が使われる
タイ えび・ピーナッツ・魚醤(ナンプラー) パッタイ・炒め物ほぼ全てに含まれる
韓国 えび・ゴマ キムチ(えびペースト入り)・ナムルに多用される
中国 落花生・大豆・えび 炒め料理では鍋・油の共用による混入リスクあり
インド 乳製品(ギー)・ナッツ・豆類 カレーのベースにギー(バター由来の澄まし油)が多用される

「ピーナッツフリーにしてほしい」とカードで伝えても、タイ料理の場合はナンプラーのえびにも反応する方は別途伝える必要があります。アレルゲンが複数ある場合は、カードにすべて明記してください。

現地食品表示の読み方

EU(欧州連合):14品目が義務表示。太字・斜体・下線などで強調される。「Contains: milk, wheat」のように原材料名内に明記されます。

アメリカ(FDA基準):牛乳・卵・魚・甲殻類・木の実・小麦・ピーナッツ・大豆・ゴマの9品目が義務表示。「Contains: peanuts」の形式で記載されます。

韓国:식품알레르기 유발물질(食品アレルギー誘発物質)として18品目が義務表示対象です(例:卵・乳・エビ・カニ・魚・ピーナッツ・大豆・小麦・そば・サバ・イカ・ハマグリ・牛肉・豚肉・鶏肉・甲殻類等)。

タイ・中国:食品ラベルのアレルゲン表示は整備途上です。特に屋台や市場では表示がないことが多いため、アレルギーカードを使った口頭確認が現実的な対策になります。

Man slicing raw meat on a yellow cutting board in a modern kitchen setting.

海外でアナフィラキシーが起きたとき:緊急対応と子連れの追加対策

万が一に備え、対応の手順を頭に入れておきましょう。

Step 1 — エピペンの自己注射
太ももの前面外側に注射します(衣服の上からでも可)。注射後は横になり、脚を高くします。

Step 2 — 救急車を呼ぶ
アメリカ:911 / イギリス:999 / フランス:15(SAMU)/ タイ:1669 / 韓国:119 / 中国:120

アレルギーカードを提示し「アナフィラキシー(anaphylaxis)」と伝えてください。

Step 3 — 旅行保険会社へ連絡
搬送の前後に保険会社の緊急連絡先に電話します。キャッシュレス診療が使えると、現地医療費の立替払いが不要になります。

Step 4 — 受診後は安静に
エピペン使用後に症状が一旦落ち着いても、必ず医療機関で受診してください。「2相性アナフィラキシー」といって数時間後に再発することがあります。

(「打ったから大丈夫」とは思わないでください。エピペン後の病院受診は国内外共通の鉄則です)

子連れ旅行の追加対策

ホテルのビュッフェでは、複数の料理に同じ取り分けスプーンが使われることによる交差汚染に注意が必要です。チェックイン時にフロントへ書面でアレルギーを申告し、子ども用の取り分けはスタッフに対応をお願いするのが安全です。

現地の保育サービスやツアースタッフへは、アレルギーカードのコピーを渡し、エピペンの使い方を実演して見せておきましょう。「疑わしい食品は食べさせない」を事前に共有しておくのが大切です。

幼児連れの場合は、アレルゲンフリーのスナックやレトルト食品を多めに持参しておくと、現地で安全な食材が見つからない場面の備えになります。国内での外食対応と基本的な考え方は共通しています。

→食物アレルギー外食完全ガイド|レストラン・ファミレス・居酒屋でアレルゲンを確認する方法と安全に外食する実践マニュアル

よくある質問

エピペンは何本持っていけばいいの?

最低2本が推奨されています。1本目を使用後に症状が改善しない場合、2本目を使います。旅行期間が長い場合は主治医に本数を相談してください。有効期限の確認は出発前に必ず行ってください。

機内でアレルゲンの匂いがしても大丈夫?

ピーナッツの匂いだけで重篤な反応が起きる可能性は極めて低いです。ただし感作度が高い人では、吸入で鼻水や目のかゆみ程度の症状が出ることはあります。日本アレルギー学会は食物アレルギーに関するガイドラインで吸入による症状の可能性を認めていますが、機内での匂いだけを対象とした公式見解は公表していません。気になる場合は、座席周辺をウェットティッシュで拭く、あるいは事前に航空会社へ相談する方法もあります。

旅行保険は何を重視して選べばいいの?

最も重要なのは「疾病治療費の上限額」と「キャッシュレス対応の有無」です。米国では救急外来費が100万円を超えることがあるため、疾病治療費1,000万円以上で事前承認なしのキャッシュレス診療対応プランを選ぶと、緊急時に手続きが楽になります。

現地でアレルギーカードを見せても伝わらないときは?

英語版のカードも一緒に持っておくと、現地語が通じにくい場面でも英語話者のスタッフ経由で伝わります。食材を実際に指さして「Does this contain ___?」と聞くのも実用的です。スマートフォンの翻訳アプリ(テキスト翻訳・カメラ翻訳)を補助として使うと、食品ラベルの読み取りにも役立ちます。


食物アレルギーがあっても、準備さえ整えれば海外旅行の選択肢は十分あります。「多言語カード・機内食申請・エピペン手続き・保険確認」の4つを出発前に済ませておけば、現地での不安は大きく減ります。初めての渡航前は、まず主治医に渡航の予定を伝えて相談するところから始めてみてください。

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