こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。
花粉症の治療というと、毎年シーズンが来るたびに薬を飲んで耐える——というイメージが強いですよね。でも実は、花粉症を「根本から治す」ことを目指せる治療法があります。それが舌下免疫療法です。
結論から言うと、舌下免疫療法は3〜5年の治療期間が必要ですが、約7〜8割の方に症状の改善が見られるとされています。保険適用で月の自己負担は2,000〜3,000円程度。毎年の花粉症がつらすぎる方には検討する価値のある治療です。
舌下免疫療法ってどんな治療?
舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ体に取り込んで、徐々に体を慣らしていく治療法です。「アレルゲン免疫療法」の一種で、注射ではなく舌の下に薬を置いて溶かす方法なので自宅で毎日できます。
仕組みをざっくり言うと、こうです。
- アレルゲンをごく少量から体に入れ始める
- 徐々に量を増やしていく
- 体の免疫が「これは攻撃しなくていいもの」と学習する
- 花粉が飛んでも過剰反応しなくなる
いわば花粉に対する「免疫の再教育」です。即効性はありませんが、治療を続ければ花粉シーズンに薬がいらなくなる方もいます。
対象になるアレルギーと使用する薬
現在、日本で保険適用されている舌下免疫療法の薬は2種類です。
| 薬剤名 | 対象アレルゲン | 剤型 | メーカー |
|---|---|---|---|
| シダキュア | スギ花粉 | 錠剤(舌下錠) | 鳥居薬品 |
| ミティキュア | ダニ(ハウスダスト) | 錠剤(舌下錠) | 鳥居薬品 |
スギ花粉症の方はシダキュア、ダニアレルギー(通年性アレルギー性鼻炎)の方はミティキュアを使います。
ヒノキ花粉やブタクサなど、スギ・ダニ以外のアレルゲンに対する舌下免疫療法は、現時点では日本では保険適用されていません。ただし、スギ花粉とヒノキ花粉はアレルゲンの構造が似ているため、シダキュアでヒノキの症状も軽くなるケースが報告されています。

治療の流れ
舌下免疫療法の治療は、大きく3つのフェーズに分かれます。
フェーズ1:検査と診断
まずは耳鼻咽喉科やアレルギー科を受診して、血液検査でアレルゲンを特定します。舌下免疫療法は「スギ花粉アレルギーである」と確定診断が出た方のみ対象です。
フェーズ2:治療開始(増量期)
最初の1週間は少量から始めて、2週目から通常量に増やします。初回の服用は医療機関で行い、30分間は院内で副作用の有無を観察します。問題なければ、翌日から自宅で毎日服用。
服用方法はシンプルです。
- 舌の下に錠剤を置く
- 1分間そのまま保持(飲み込まない)
- 1分経ったら飲み込む
- 服用後5分間は飲食を避ける
毎日同じ時間帯に服用するのが望ましいですが、厳密に同じ時刻でなくても大丈夫です。
(私の知人は朝の歯磨き前に飲む習慣にしたら忘れなくなったそうです。ルーティンに組み込むのがコツですね)
フェーズ3:維持期(3〜5年)
増量期を過ぎたら、同じ量を毎日続けます。これを3〜5年間継続します。
「3〜5年」と聞くと長く感じるかもしれません。正直、長いです。でも考えてみてください。花粉症が今後何十年も続くのと、3〜5年頑張って大幅に楽になるのと、どちらがトータルで楽か。
(3年って聞いた瞬間「うっ」となる気持ちはわかります。私もなりました。でも毎年2〜4月を地獄のように過ごすよりは…と思って検討中です)
効果はどのくらい?
舌下免疫療法の効果は個人差がありますが、臨床試験や医学文献では以下のような結果が報告されています。
- 約7〜8割の方に症状の改善が見られる
- そのうち約2割は症状がほぼ消失(薬が不要になるレベル)
- 残りの約5〜6割は「症状が軽くなった」「薬の量を減らせた」など部分的な改善
- 約2割の方には十分な効果が見られない
効果は治療開始から1〜2年目くらいで実感する方が多いとされています。「1シーズン目から劇的に変わった」という方もいれば、「2年目からじわじわ楽になった」という方もいます。
注意点として、治療を途中でやめてしまうと効果が定着しない可能性があります。3年以上の継続が推奨されている理由はここにあります。
費用と保険適用
舌下免疫療法は健康保険が適用されます。
| 項目 | 費用目安(3割負担) |
|---|---|
| 初診料 + 検査(血液検査) | 3,000〜6,000円程度 |
| 薬代(月額) | 1,500〜2,000円程度 |
| 再診料(月1回) | 500〜1,000円程度 |
| 月あたりの合計 | 約2,000〜3,000円 |
| 年間の合計 | 約24,000〜36,000円 |
| 3年間の総額 | 約72,000〜108,000円 |
毎年の花粉症シーズンに市販薬+通院で使う費用を考えると、長期的にはトントンか、むしろ安くなる可能性があります。
また、お子さんの場合は自治体の医療費助成制度の対象になることが多く、さらに自己負担が軽くなります。
副作用とリスク
舌下免疫療法の副作用は、多くの場合は軽度です。
よくある副作用(軽度):
– 口の中のかゆみ・腫れ(服用直後)
– 唇の腫れ
– 喉のイガイガ感
– 耳のかゆみ
これらは治療開始直後に多く、1〜2ヶ月で収まることがほとんどです。
まれだが重要な副作用:
– アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)
アナフィラキシーは極めてまれですが、可能性はゼロではありません。初回服用を医療機関で行い、副作用の対応方法について事前に説明を受けるのはこのためです。自宅での服用中に全身のじんましん・呼吸困難・意識もうろうなどが出た場合は、すぐに救急対応が必要です。
不安な方は、服用後30分は自宅で安静にしておくと安心です。
始めるタイミング
スギ花粉の舌下免疫療法を始められるのは、花粉が飛んでいない時期(6月〜11月頃)です。
花粉シーズン中に開始すると、薬のアレルゲンと空気中の花粉のダブルパンチで副作用が出やすくなるため、花粉の飛散が落ち着いてから始めるのが原則です。
逆に言えば、花粉シーズン中に「もうこんなつらい思いしたくない」と思ったら、シーズン終了後すぐに耳鼻咽喉科を予約するのがベストタイミングです。思い立ったときに予約だけしておかないと、シーズンが終わると忘れがちなので。
舌下免疫療法が向いている人・向いていない人
向いている人
- 毎年の花粉症が生活に大きく支障を出している
- 市販薬だけでは症状をコントロールしきれない
- 3〜5年の長期治療に取り組む意志がある
- 毎日の服用を継続できる
向いていない人
- 重症の気管支喘息がある方(主治医との相談が必要)
- 妊娠中・妊娠予定の方(治療中に妊娠した場合は医師に相談)
- 5歳未満のお子さん(適応外)
- 毎日の服用を続けるのが難しい方
特に「毎日の服用を続けられるか」が最も重要です。飲み忘れが続くと効果が出にくくなりますし、長期間中断した場合は最初からやり直しになることもあります。
よくある質問
Q. 舌下免疫療法を始めたら市販薬は飲まなくていいの?
治療開始直後から薬がいらなくなるわけではありません。特に1〜2年目の花粉シーズンは、従来どおり抗ヒスタミン薬などの市販薬を併用して症状を抑えるのが一般的です。効果が出てくるにつれて、徐々に薬の量を減らせるようになります。
Q. 治療をやめたら花粉症は再発するの?
3〜5年の治療を完遂した場合、治療終了後も数年〜十数年にわたって効果が持続するとされています。ただし、永久に効果が続く保証はなく、長期経過後に症状が戻る可能性もあります。再発した場合は再度治療を受けることも可能です。
Q. スギ花粉とダニの両方にアレルギーがある場合は?
シダキュア(スギ)とミティキュア(ダニ)を両方同時に受けることも可能です。ただし、同時開始ではなく1ヶ月以上ずらして始めるのが一般的です。副作用が出た場合にどちらの薬が原因か判別するためです。
Q. 注射の免疫療法と舌下免疫療法、どっちがいい?
注射(皮下免疫療法)のほうが歴史が長く効果もやや高いとする報告がありますが、通院頻度が高く(最初は週1回)、注射の痛みもあります。舌下免疫療法は自宅で毎日できて通院は月1回程度。利便性では舌下が圧倒的に上です。効果と手軽さのバランスで、現在は舌下免疫療法が主流になっています。
まとめ
舌下免疫療法のポイントをまとめます。
- 治療期間: 3〜5年(毎日1回、舌の下に錠剤を置く)
- 効果: 約7〜8割に改善が見られる。うち約2割は薬が不要になるレベル
- 費用: 保険適用で月2,000〜3,000円程度
- 開始時期: 花粉が飛んでいない6月〜11月に開始
- 対象: スギ花粉(シダキュア)とダニ(ミティキュア)の2種類
「毎年の花粉症がつらすぎるから根本的に何とかしたい」という方には、一番現実的な選択肢です。まずは耳鼻咽喉科で相談してみてください。
市販薬での対処法は別記事でまとめています。まずは薬で今シーズンを乗り切りつつ、来シーズンに向けて舌下免疫療法を検討するのもありですよ。
巻子でした。


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