こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。
アレルギー性鼻炎の薬、今の量で足りていますか?「市販薬を何年も続けているのに、年々症状がひどくなっている気がする」という声を毎年のように聞きます。この記事では、日本アレルギー学会が準拠する「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」に基づき、軽症・中等症・重症・難治性の4段階と、それぞれに対応する治療法を一覧にまとめました。「今の薬で足りているか」「病院に行くべきタイミングはいつか」の判断基準がここで見つかります。
ARIA分類とは?重症度を決める2つの軸
ARIA(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)は、アレルギー学の専門家・研究者・医師からなる国際的な専門家グループ(ARIAコンソーシアム)が策定したアレルギー性鼻炎の国際基準です。2001年にWHO(世界保健機関)の支援で開催されたワークショップが発足の起点となり、世界アレルギー機構(WAO)はその普及に協力しています。分類の軸は「持続期間」と「症状の強さ」の2つです。
持続期間の軸は次の2つです。
- 間欠性は週4日未満、または4週間未満の症状
- 持続性は週4日以上、かつ4週間以上続く症状
症状の強さの軸は次の2つです。
- 軽症は睡眠・日常生活・仕事・学業に影響がない状態
- 中等症〜重症は上記のいずれかに支障が出ている状態
日本の「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」はこのARIA分類をベースに、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの3症状の頻度と強さから「最軽症・軽症・中等症・重症・最重症」の5段階に細分化しています。治療のステップアップもこの段階分類に沿って設計されています。
自分の重症度を判定する|3症状チェック表
まず、くしゃみ・鼻水・鼻づまりのそれぞれがどの程度か確認します。3つのうち「最も強い症状」で重症度が決まります。
| 症状 | 軽症 | 中等症 | 重症 |
|---|---|---|---|
| くしゃみ(回/日) | 5回以下 | 6〜20回 | 21回以上 |
| 鼻水 | 少量 | 中等量 | 大量 |
| 鼻づまり | ほとんどなし | 1日2時間以上の口呼吸 | ほぼ常時口呼吸 |
※鼻アレルギー診療ガイドライン2020には、重症を上回る「最重症(非常に強い発作が頻回に起こる状態)」という区分も存在します。
3症状のうち最も強いものを基準に、重症度を判定します。
| 重症度 | 最も強い症状 | 生活への影響 |
|---|---|---|
| 最軽症 | すべて軽症未満 | なし |
| 軽症 | 最大でも軽症レベル | なし |
| 中等症 | 1つ以上が中等症レベル | 一部に支障あり |
| 重症 | 1つ以上が重症レベル | 大きく支障あり |
| 最重症 | 非常に強い発作が頻回 | 著しく支障あり |
(自分で「軽い」か「中等度」かを正確に決めるのは、思っている以上に難しいです。迷ったら中等症側で考えておくほうが、治療の出遅れを防げます)
重症度別の治療ステップ一覧
| 重症度 | 基本の選択 | 効果不十分なら |
|---|---|---|
| 最軽症・軽症 | 第2世代抗ヒスタミン薬または点鼻ステロイド(単剤) | 症状が強まったら中等症として再評価 |
| 中等症 | 抗ヒスタミン薬+点鼻ステロイドの2剤 | 抗ロイコトリエン薬を追加 |
| 重症 | 上記3剤+必要に応じて生物学的製剤 | 難治性なら手術・免疫療法へ移行 |
最軽症・軽症の治療
第2世代抗ヒスタミン薬(経口)か、点鼻ステロイドのいずれかで対応できます。市販薬でもフェキソフェナジン(アレグラ)、ロラタジン(クラリチンEX)、セチリジン(アレジオン)などが選択肢になります。
くしゃみ・鼻水が中心なら経口の抗ヒスタミン薬、鼻づまりが主体なら点鼻ステロイドのほうが効果を実感しやすい傾向があります。市販の点鼻ステロイドには成分の選択肢が少ないため、「市販薬の点鼻薬でも鼻づまりが取れない」場合は処方薬への切り替えを検討する価値があります。
→花粉症の処方薬と市販薬の違い|市販薬が効かないときに病院で処方してもらうべき薬とは
中等症の治療
抗ヒスタミン薬と点鼻ステロイドを組み合わせて使います。鼻アレルギー診療ガイドライン2020では、中等症以上は「2剤以上の組み合わせが推奨される」と明記されています。
この段階から市販薬だけで乗り切ろうとすると、薬の種類・用量が不足しやすくなります。耳鼻科を受診して処方薬(モメタゾン点鼻薬など)を得ることで、症状のコントロールがラクになるケースが多いです。
重症の治療
抗ヒスタミン薬+点鼻ステロイドに、抗ロイコトリエン薬(モンテルカスト、プランルカストなど)を加えた3剤が基本です。ロイコトリエンは鼻づまりを悪化させる炎症物質で、抗ヒスタミン薬では抑えにくい部分を補います。
3剤でも不十分な場合、生物学的製剤が選択肢に入ります。ゾレア(オマリズマブ)は、スギ花粉症による季節性アレルギー性鼻炎の重症・最重症例(抗ヒスタミン薬・点鼻ステロイドなど既存治療でコントロール不十分な場合)に保険適用があります(2020年1月〜)。デュピクセント(デュピルマブ)は、鼻茸(ポリープ)を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な場合)に保険適用があり、IL-4・IL-13を介する2型炎症を抑えます。アレルギー性鼻炎単体への適用はなく、適応については専門医への確認が必要です。
(どちらも月に数万円単位の費用がかかり、処方できる施設も限られています。「重症と診断されたらすぐ使える」というより、専門医への紹介が前提の治療です)
難治性・根治を目指す場合
薬でコントロールしきれない重症例には、手術または免疫療法が検討されます。
手術の選択肢
レーザー治療は鼻粘膜をレーザーで処置する方法で、日帰り可能・効果は1〜2年程度が目安です。下甲介切除術・後鼻神経切断術はより根本的な手術で、効果が長期に続く可能性があります。いずれも耳鼻科での診察・適応判断が必要です。
→アレルギー性鼻炎の手術治療完全ガイド|レーザー・下甲介切除術・後鼻神経切断術の違いと費用・効果・回復期間
免疫療法の選択肢
アレルゲンに少量ずつ慣らして免疫反応を変えていく治療法です。舌下免疫療法(自宅で毎日服用)と皮下免疫療法(通院で定期注射)の2種類があり、どちらも3〜5年の継続が必要です。鼻アレルギー診療ガイドライン2020では「重症・難治性への推奨度が高い治療法」として位置づけられており、症状の根本的な改善が期待できます。
→皮下免疫療法(減感作療法)完全ガイド|舌下免疫療法との違い・費用・通院スケジュール・適応を徹底解説
「今すぐ受診を」のサイン
次のうち1つでも当てはまるなら、市販薬でがんばりすぎずに耳鼻科への受診を考えてください。
- 市販薬を2週間使っても改善しない
- 毎晩、鼻づまりで目が覚める・なかなか眠れない
- 仕事や学業の集中力が明らかに落ちている
- 症状が毎年ひどくなっている(年々悪化傾向)
- 抗ヒスタミン薬を飲んでも鼻づまりが取れない
- 黄色〜緑の鼻汁が続く、または顔面に圧迫感がある(副鼻腔炎の合併を疑う)
(「あと1週間様子を見て…」を毎週繰り返し、気づいたらシーズンが終わっていた。私の毎年恒例です)

よくある質問
市販薬だけで重症アレルギー性鼻炎に対応できる?
軽症〜中等症の前半くらいまでは対応できることがあります。ただし重症以上では処方薬の種類・用量が必要になるケースが多く、市販薬のみで乗り切ろうとすると症状が慢性化しやすくなります。「毎年薬を変えてもよくならない」と感じているなら、一度耳鼻科で重症度の評価を受けるのが近道です。
ARIA分類と日本のガイドラインは別物なの?
おおむね同じ方向性ですが、細かい点で異なります。ARIAはアレルギー学の国際的な専門家グループ(ARIAコンソーシアム)が策定したもので、「持続期間×症状強度」の2軸マトリクスで分類します。日本の鼻アレルギー診療ガイドラインはくしゃみ・鼻水・鼻づまりの3症状の強度から最軽症〜最重症の5段階に分類します。どちらも「症状が日常生活・睡眠・仕事に影響しているか」を基準にしている点は共通しています。
抗ロイコトリエン薬って何?
ロイコトリエンという炎症物質を抑える薬です(モンテルカスト、プランルカストなど)。鼻づまりを引き起こす物質に直接作用するため、抗ヒスタミン薬では効きにくい「鼻づまり優位型」に特に効果が出やすいとされています。現時点では処方薬のみで、市販薬にはありません。
耳鼻科と内科、どちらに行けばいい?
基本は耳鼻咽喉科(耳鼻科)が適しています。内視鏡で鼻の中を直接確認でき、アレルゲン血液検査・重症度評価・処方の選定をまとめて受けられます。重症・難治性の場合や手術・免疫療法を検討するなら、耳鼻科への受診が確実です。
今日からできること
アレルギー性鼻炎は、重症度に合った治療を選ぶことで症状のコントロールが大きく変わります。
- 軽症なら抗ヒスタミン薬か点鼻ステロイドの単剤から
- 中等症なら2剤の組み合わせ、処方薬の検討を
- 重症なら3剤併用、生物学的製剤の相談も視野に
- 難治性なら手術や免疫療法が根本的な選択肢になる
「市販薬を続けているけど効いている気がしない」と感じているなら、今日の重症度チェックが治療を見直すきっかけになります。症状を我慢してコントロールしないでいると、年々少しずつ悪化していく傾向があります。耳鼻科への受診はハードルが高く感じるかもしれませんが、薬の選び方が変わるだけで生活の質が変わることがあります。


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