こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。
果物を食べた後に口や喉がかゆくなったこと、ありませんか? それ、単なる食物アレルギーとは別物かもしれません。花粉症のある人に起きやすい「口腔アレルギー症候群(OAS)」という症状で、花粉症患者の3〜4割に見られると報告されています。原因は花粉のタンパク質と特定の食品のタンパク質が構造上よく似ているため。加熱すれば食べられることも多く、正しく知れば対処できます。
OASとは?「食物アレルギー」との違いを整理する
OAS(Oral Allergy Syndrome)は、日本語では「口腔アレルギー症候群」、英語圏では「花粉関連食物アレルギー症候群(PFAS: Pollen-Food Allergy Syndrome)」とも呼ばれます。
「食物アレルギー」と混同されがちですが、まったく別の話です。
食物アレルギーは食べ物そのものに含まれるアレルゲンへの反応ですが、OASは花粉症がベースにある人が、花粉と構造の似たタンパク質を食べ物で摂取したときに起きます。そのため、花粉症が改善すれば症状も落ち着くことがありますし、加熱で抗原性が落ちる食品なら問題なく食べられることもあります。
国内の耳鼻科・アレルギー科の調査では、花粉症患者の3〜4割程度がOASを経験するとされています。「そんなに多いの?」と思う方もいるかもしれませんが、「リンゴを食べると口が少しかゆい気がする」という軽いものを含めるとこの数字になります。
なぜ起きる?「交差反応」のしくみ
OASのメカニズムは「交差反応」と呼ばれます。
花粉を繰り返し吸い込むと、体は花粉のタンパク質(アレルゲン)を「敵」として認識し、IgE抗体を作ります。これが花粉症の仕組みです。
問題は、特定の果物や野菜に含まれるタンパク質が、この花粉アレルゲンと構造上よく似ている点にあります。口の中でそれを認識したとき、IgE抗体は「花粉と同じだ」と誤認識し、肥満細胞からヒスタミンが放出されます。その結果が、口・唇・喉のかゆみやピリピリ感です。
流れを整理するとこうなります。
- 体が花粉アレルゲンに対してIgE抗体を作る(=花粉症)
- 果物・野菜に含まれる「構造の似たタンパク質」を口に入れる
- IgE抗体が「花粉と同じだ」と誤認識する(交差反応)
- 肥満細胞がヒスタミンを放出する
- 口・唇・喉のかゆみ・ピリピリ・軽度の腫れが起きる
症状は通常15〜30分以内に自然に収まります。胃に入るとタンパク質が胃酸で壊れるため、全身症状に発展しにくいのがOASの特徴です。

花粉の種類別 × 注意すべき食品一覧表
自分がどの花粉に反応しているかによって、気をつけるべき食品が変わります。
| 花粉の種類 | 飛散の目安 | 注意が必要な食品(代表例) |
|---|---|---|
| スギ | 2〜4月 | トマト、キウイ、メロン |
| ヒノキ | 3〜5月 | モモ、リンゴ、サクランボ、ナシ |
| イネ科(カモガヤなど) | 5〜9月 | メロン、スイカ、オレンジ、トマト |
| ブタクサ | 8〜10月 | バナナ、メロン、キュウリ、ズッキーニ |
(OAS関連の記事を読んでいると、注意食品が五十音順に羅列されているだけで「どの花粉に反応している人が気をつけるべきか」が書かれていないものがほとんどです。それでは結局「全部避けるしかないの?」という話になってしまうので、花粉別に整理しました)
この表は「多く報告されている組み合わせ」です。同じ花粉に感作されていても、すべての対応食品で症状が出るわけではありません。食事日記をつけながら、自分がどの食品に反応するかを把握していくのが実用的です。
加熱・加工で食べられる?抗原性の変化を知る
OASの大きな特徴として、加熱や缶詰・ジュース加工によって症状が出なくなる食品が多くあります。
加熱で抗原性が下がりやすい食品
- リンゴ → アップルパイや加熱ジャムなら食べられることが多い
- モモ → 缶詰(シロップ漬け)は問題なく食べられるケースが多い
- メロン → 加熱調理後は反応しにくくなる
これはOASの原因タンパク質の多くが「熱不安定性」という性質を持っているためです。加熱すると立体構造が崩れ、IgE抗体が認識できなくなります。
加熱しても注意が必要な食品
加熱すれば全部解決、とはいきません。
- セロリ:加熱しても抗原性が残りやすく、重篤な反応例の報告もある
- ナッツ類(ヘーゼルナッツ・クルミなど):加熱後も反応が続くことが多い
(「加熱すれば食べられます」という情報だけ受け取って安心してしまうのが一番危ないパターンです。セロリとナッツだけは例外として頭に入れておいてください)

こんな症状が出たらすぐに救急へ
OASのほとんどは軽症ですが、まれにアナフィラキシーへ進行することがあります。
以下の症状が出た場合は、直ちに119番へ連絡してください。
- 全身に広がる蕁麻疹・皮膚の腫れ
- 呼吸困難・ゼーゼーする息
- 声のかすれや飲み込みにくさ
- 気分の悪さ・血圧低下・意識が遠くなる感覚
また、食後2時間以内の激しい運動でアナフィラキシーが誘発される「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)」という病態もあります。OASの既往がある方は、食後すぐの激しい運動は避けるのが安全です。
病院ではどう診断する?
OASが疑われるときの診断の流れです。
問診
どの食品で、どのような症状が、どのくらいの時間後に出たかを確認します。花粉症の既往は必ず伝えてください。
特異的IgE検査(ImmunoCAP)
血液検査でスギ・ヒノキ・イネ科・ブタクサなどの花粉IgEと、対応する食品IgEを同時に測定します。
食物経口負荷試験
確定診断が必要な場合、医療機関内で問題の食品を少量から食べて反応を確認します。自宅での試みは危険なため、必ず専門機関で行ってください。
アレルギー科・耳鼻咽喉科・内科が受診先の候補です。「食後に口や喉がかゆくなる、花粉症もある」と伝えると話が早いです。
よくある質問
花粉症がなくても口がかゆくなるの?
OASは花粉症(花粉へのIgE感作)が前提です。花粉症がないのに果物で口がかゆくなる場合は、別の食物アレルギーの可能性があります。アレルギー科を受診してください。
子どもにも起きる?
起きます。ただし、子どもは「口がへん」「のどがチクチクする」などとわかりにくい訴え方をすることがあります。果物を食べるたびに不快そうにする場合は、小児科かアレルギー科への相談を検討してください。
毎日飲んでいる抗ヒスタミン薬はOASにも効く?
軽度のOAS症状を和らげる効果がある場合があります。ただし、重症化を防ぐものではありません。
(抗ヒスタミン薬を飲んでいるから大丈夫、と症状の出る食品を食べ続けるのは危険なパターンです。薬は「出てしまった症状の緩和」であって「予防」ではないので、あくまで原因食品を避けることが基本です)
花粉免疫療法をするとOASも改善する?
スギ花粉舌下免疫療法でOASが改善するという報告はあります。ただし対応食品や個人差があるため、改善を期待して免疫療法を始めるかどうかは担当医に相談して判断してください。
まとめ
口や喉のかゆみが果物・野菜を食べた後に起きるなら、OASを疑ってください。食物アレルギーとの混同は誤った対処につながります。
まず自分がどの花粉に感作されているかを確認し、それに対応する食品を把握すること。加熱で食べられるものも多いですが、セロリとナッツ類は要注意。症状が軽く15〜30分で収まるなら、対応食品を避けながら様子を見ていくことになります。ただし、全身症状や呼吸困難が出たら即119番です。
症状が繰り返す、または重くなっている感覚があるときは、アレルギー科への早めの受診をおすすめします。


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