こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。
花粉症の季節に「最近においが薄い」「食事の味がぼんやりする」と感じたことはありませんか。「もしかしてコロナの後遺症?」と不安になった方もいると思います。結論から言うと、花粉症による嗅覚の低下はほとんどの場合、花粉シーズン終了後2〜4週で自然に回復します。 COVID-19後遺症の嗅覚障害とは原因・回復速度・随伴症状がまったく異なります。この記事でその違いと受診すべきサインを整理します。
花粉症でにおいがわからなくなるメカニズム
花粉症による嗅覚の低下は、医学的には伝導性嗅覚障害(または気道性嗅覚障害)と呼ばれます。
においを感じるには、においの分子が鼻の奥にある「嗅裂(きゅうれつ)」という狭い空間に届く必要があります。ところが、花粉症の炎症で鼻粘膜が腫れると、この嗅裂がふさがってしまいます。においの分子が物理的に届かなくなる状態です。いわば「道が詰まった状態」と理解するとわかりやすいです。
神経そのものは傷ついていないため、炎症が引けばにおいは戻ります。
においを感じる「嗅裂」とはどこ?
嗅裂は鼻腔の上部、目と目の間の奥に位置する狭い空間です。鼻詰まりがひどい日ほどにおいが届きにくくなるのはこのためで、「鼻の詰まりが解消する=においが戻る」という関係があります。
コロナ後遺症と花粉症の嗅覚障害、何が違う?
「においがしない=コロナ?」という不安は自然な反応です。ただ、両者の原因は根本的に異なります。
| 比較項目 | 花粉症の嗅覚障害 | COVID-19後遺症の嗅覚障害 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 粘膜の腫れで嗅裂がふさがる(伝導性・気道性) | ウイルスが嗅上皮の支持細胞に感染し、嗅神経の機能が間接的に低下する(神経性・混合性) |
| 発症のしかた | くしゃみ・鼻水と同時に徐々に | 感染後に突然(発熱・倦怠感と同時期か、それより早期に) |
| 随伴症状 | くしゃみ・水っぽい鼻水・目のかゆみ | 発熱・倦怠感、回復後も嗅覚だけ残るケースあり |
| 回復までの目安 | 花粉終息後2〜4週 | 数週間〜数年(個人差が大きい) |
| 鼻詰まりとの関係 | 詰まりと連動して変化する | 鼻は通っているのに感じないケースも多い |
| 障害の種類 | 伝導性嗅覚障害(気道性嗅覚障害) | 神経性・混合性嗅覚障害 |
最もわかりやすい見分け方は「鼻詰まりと連動しているか」です。鼻が詰まるとにおいが薄れ、通るとにおいが戻るなら花粉症の可能性が高いです。鼻は通っているのににおいが消えた場合、またはコロナ感染後に症状が始まった場合は早めに耳鼻科を受診してください。
(「なんとなくにおいが薄い気がする…」くらいだと、花粉症なのかコロナなのか自分ではなかなか判断できないんですよね。迷ったら耳鼻科に行くのが一番早いです)

においだけじゃない、食事の味もぼんやりする理由
「においが薄いな、と思ったら食べ物の味もぼんやりしてきた」という経験をした方もいると思います。
私たちが感じる「味」は、舌が感じる甘い・塩辛い・酸っぱい・苦い・うまみだけではありません。食べ物を噛んだときに鼻に抜ける香り成分「風味」が合わさって初めて複雑な味として認識されます。食品の風味の大部分は嗅覚が担っており、嗅覚が落ちると「食事が薄い」「なんか違う味に感じる」という状態になります。舌の機能自体は問題ありません。
「味がしない」と感じたとき、実は嗅覚が原因というケースは珍しくありません。
花粉シーズン中の自然経過と回復期間の目安
伝導性嗅覚障害(気道性嗅覚障害)は、花粉シーズンが終われば多くの場合は自然に回復します。
- シーズン終了直後は粘膜の炎症が残るため、しばらく低下が続くことがある
- 終息から1〜2週間で「においが少し戻ってきた」と感じ始めるケースが多い
- 2〜4週間でほぼ元の感度に近づくことが多い
ただし副鼻腔炎を合併している場合や、もともと鼻の炎症が長引きやすい方は回復に時間がかかることがあります。

回復を早める3つの対処法
嗅裂の詰まりを解消することが回復の近道です。
点鼻ステロイドを使う
鼻粘膜の炎症を抑える薬です。粘膜の腫れが引くことで嗅裂の通りもよくなります。点鼻ステロイドはスイッチOTC医薬品として市販薬でも購入できます(処方箋不要)。ナザールαAR(ベクロメタゾン含有)やフルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>(フルチカゾン含有)などが薬局で購入できます。用法・用量は添付文書または薬剤師に確認してください。
→花粉症の点鼻薬おすすめ|ステロイド・血管収縮剤の違いと正しい使い方
抗ヒスタミン薬を継続して飲む
鼻の炎症を抑え、粘膜の腫れを軽減します。「花粉が多い日だけ飲む」ではなく、花粉シーズン中は継続して飲むことで嗅覚低下を防ぎやすくなります。
鼻うがいで粘膜の状態を整える
生理食塩水を使った鼻うがいは、花粉や炎症物質を物理的に洗い流す方法です。薬局でキットが販売されています。点鼻薬を使う前に鼻うがいをすると薬が浸透しやすくなります。
(毎日の鼻うがいって地味に面倒なんですよね。でも続けると鼻の通り具合が実際に違います。私は花粉ピーク時だけ習慣にしています)
耳鼻科を受診すべきサイン
次のいずれかに当てはまる場合は、自己判断せず耳鼻科を受診してください。
- 花粉シーズン終了後1ヶ月以上たってもにおいが戻らない
- においが「薄い」でなく「まったく感じない(嗅覚完全消失)」
- 黄色・緑色の鼻水が続く、または顔の痛み・頭痛がある(副鼻腔炎の疑い)
- 以前コロナに感染したことがあり、においの消失がその後から始まった
副鼻腔炎を合併している場合は、花粉症の治療だけでは嗅覚が戻りにくいことがあります。CT撮影で副鼻腔の状態を確認してもらうことが重要です。
嗅覚トレーニング:においが戻ってきたら試す価値あり
嗅覚リハビリテーション(嗅覚トレーニング)は、ウイルス性・外傷性の嗅覚障害の回復支援として研究が進んでいます。花粉症の伝導性嗅覚障害への直接効果は限定的ですが、「においが戻り始めた段階」に並行して試す価値があります。
やり方
- バラ・レモン・ユーカリ・クローブなど、はっきりしたにおいを4種類用意する
- 1種類につき10秒ずつ、「これはバラの香り」と意識しながら嗅ぐ
- 1セット約1分。1日2回、最低12週間継続する
Hummel教授らの研究(2009年発表、Laryngoscope誌)を起点に、欧米の耳鼻科ガイドラインでも取り上げられている方法です。嗅覚がまったく感じられない段階では効果が出にくいとされており、回復期に取り組むのが現実的です。
よくある質問
花粉症でにおいが消えるのはよくあること?
珍しくはありません。花粉症患者の一部は、鼻詰まりのひどい時期に嗅覚の低下を経験します。特にスギ・ヒノキ花粉シーズンのピーク時に見られます。
コロナと花粉症の嗅覚障害、どう見分ける?
「鼻詰まりと連動しているか」が最もわかりやすい判断ポイントです。鼻が詰まるとにおいが薄れ、通ると戻るなら花粉症の可能性が高いです。鼻は通っているのににおいが消えた場合、またはコロナ感染後に始まった場合は耳鼻科を受診してください。
においは薬で戻る?
花粉症の嗅覚障害は、根本の鼻粘膜の炎症を抑えることで回復に向かいます。「においを直接戻す薬」というより「詰まりの原因を取り除く薬」が正しいイメージです。点鼻ステロイドや抗ヒスタミン薬が有効です。
シーズン後もにおいが戻らない場合は?
1ヶ月以上回復しない場合は、副鼻腔炎の合併や神経性嗅覚障害への移行が考えられます。耳鼻科でCTや嗅覚検査を受けることで原因が特定できます。自己判断せず受診してください。
まとめ
花粉症のにおいの低下は、嗅裂が詰まることで起きる「伝導性嗅覚障害」(または気道性嗅覚障害)が主な原因です。花粉シーズンが終われば多くの場合は自然に回復します。
ただし、シーズン終了後1ヶ月以上経っても回復しない、まったくにおいを感じない、コロナ感染後から症状が始まったという場合は耳鼻科の受診が必要です。
日常の対処としては点鼻ステロイド・抗ヒスタミン薬の継続使用・鼻うがいが有効です。用法・用量は必ず添付文書または薬剤師に確認してください。
嗅覚は食の楽しさや危険察知に直結する感覚です。「花粉だから仕方ない」で流さず、戻りが遅いと感じたら早めに耳鼻科へ相談することをお勧めします。


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