こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。
高齢者の花粉症に市販薬を選ぶとき、「眠くならない」という基準だけで選ぶのは危険です。成分によっては認知機能の低下や転倒リスクに直接関わるものがあります。高齢者には第二世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン・ロラタジン等)か点鼻ステロイド薬が基本の選択肢で、市販の鼻炎薬に多く使われている第一世代(クロルフェニラミン等)は避けた方が安全です。
この記事では、高齢者に向かない成分とその理由を成分名で整理し、基礎疾患別の注意点・飲み合わせのリスク・介護家族が確認すべきポイントまでまとめました。
高齢者に花粉症が増えている理由
「年を取れば花粉症は治る」というイメージがありますが、近年は60代・70代で初めて発症するケースも珍しくありません。
アレルギー反応は、体内の免疫グロブリンE(IgE)抗体が一定量を超えたときに出てきます。毎年の花粉暴露が積み重なり、50〜60代を過ぎたころに初めてスギ花粉に反応する方もいます。「ずっと平気だったのに最近つらくなった」という場合も、この蓄積が原因のことが多いです。
加齢による免疫バランスの変化も関係しています。高齢になると免疫機能全体が変化し、アレルギー反応が出やすくなる場合があります。また基礎疾患の治療薬が免疫機能に影響するケースもあります。
第一世代抗ヒスタミン薬が高齢者に危険な理由
市販の鼻炎薬に広く配合されているクロルフェニラミン・ジフェンヒドラミンは「第一世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれます。古くから使われている成分ですが、高齢者への使用は特に注意が必要です。
BEERS基準とは
BEERS基準(ビアーズ基準)は、米国老年医学会(AGS)が定めた「高齢者に使用を避けるべき薬のリスト」です。第一世代抗ヒスタミン薬はこのリストに明記されています。日本でも日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」で同様の注意が示されており、海外だけの話ではありません。
高齢者に出やすい副作用
これらの成分には「抗コリン作用」があり、高齢者の体には特に影響が大きいことが知られています。
- 認知機能の低下やせん妄が起きやすくなります。脳の神経伝達が妨げられ、特に長期使用では認知機能に影響が出る可能性があります
- 眠気・ふらつきによる転倒・骨折リスクが高まります。夜間のトイレで転倒するケースが増えやすいです
- 前立腺肥大がある男性では排尿困難が悪化することがあります
- 緑内障がある場合、眼圧が上がりやすくなります
(市販の風邪薬や総合感冒薬にも同じ成分が入っていることが多いので、花粉症薬だけ気をつければいいわけでもないんですよね。複数の市販薬を同時に使うと成分が重なることもあります)
成分表での見分け方
購入前に裏面の「成分」欄を確認してください。以下の名称があれば第一世代です。
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
- d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
- ジフェンヒドラミン塩酸塩
- カルビノキサミンマレイン酸塩
パブロン鼻炎カプセルSα・ストナリニSなどはこれらの成分を含む代表例です。

高齢者に選びやすい花粉症薬の比較
第二世代抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が少なく、高齢者にも比較的使いやすいとされています。ただし腎機能や基礎疾患によって向き不向きが変わります。かかりつけ医か薬剤師への相談が前提です。
| 成分名(代表的な薬) | 眠気 | 腎機能低下時 | 高齢者での主な注意点 |
|---|---|---|---|
| フェキソフェナジン(アレグラFX) | 少ない | 慎重投与 | 比較的安全。腎機能低下時は医師に確認 |
| ロラタジン(クラリチンEX) | 少ない | 重篤時は慎重 | 眠気が出にくく選ばれやすい |
| セチリジン(コンタック鼻炎Z等) | やや多い | 蓄積リスク大 | 腎機能低下のある高齢者は特に注意 |
| ビラスチン(ビラノア ※処方薬のみ) | 少ない | 慎重投与 | 空腹時服用が必要。食後は吸収が落ちる |
※セチリジン塩酸塩を有効成分とする市販薬(コンタック鼻炎Z・ストナリニZ等)は薬局で購入できます。ビラスチン(ビラノア)は現在処方薬のみで、市販薬としては販売されていません。
点鼻ステロイド薬という選択肢
「ステロイド」と聞くと不安になる方もいますが、点鼻薬として使う場合は全身への吸収量が非常に少なく、高齢者にも比較的安全に使えます。くしゃみ・鼻水・鼻づまりすべてに効果があり、内服薬の副作用が心配な場合の代替になります。フルチカゾン(フルナーゼ)・モメタゾン(ナゾネックス)などが処方されます。
毎日継続して使うことで効果が出るタイプのため、症状がひどくなる前から使い始めるのが理想です。
(花粉症の薬全般に言えることですが、症状が出てから慌てて始めると追いつかないんですよね。私は毎年その反省を繰り返しています)
→花粉症の点鼻薬おすすめ|ステロイド・血管収縮剤の違いと正しい使い方
基礎疾患と飲み合わせの注意点
高齢者は複数の持病を持つ方が多く、花粉症薬の選択に影響します。
緑内障がある場合は、第一世代抗ヒスタミン薬や血管収縮薬配合の点鼻薬(ナファゾリン等)が眼圧を上げる可能性があります。必ず眼科医・かかりつけ医に確認してください。
前立腺肥大がある場合は、抗コリン作用のある薬で排尿困難が悪化することがあります。第二世代でも一部は抗コリン作用を持つ成分があるため、薬剤師への相談が安心です。
腎機能が低下している場合は、これらの薬が体内に蓄積しやすくなります。特にセチリジンは腎臓からの排泄が中心のため蓄積リスクが大きく、添付文書にも腎機能の程度に応じた用量調整の指示があります。フェキソフェナジン・ロラタジンも腎機能低下時には血中濃度が上昇しやすく、慎重投与とされています。用量についてはかかりつけ医・薬剤師に確認してください。
心疾患がある場合は、市販の鼻炎薬に含まれる血管収縮薬(プソイドエフェドリン等)が血圧・心拍数を上げる作用を持つため、成分表の確認が必要です。
飲み合わせで特に注意が必要な組み合わせも押さえておきます。
抗ヒスタミン薬と睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)を一緒に使うと、中枢神経を抑える作用が重なり、眠気・ふらつき・転倒リスクが増します。抗コリン薬(膀胱過活動治療薬・パーキンソン治療薬等)との併用は、抗コリン作用が重なり認知機能低下や口渇・排尿困難が悪化しやすくなります。抗凝固薬(ワーファリン等)を服用中の方は、新たに薬を追加する際は必ず主治医か薬剤師に確認してください。ワーファリンは治療域が狭く、さまざまな薬や食品との組み合わせで血中濃度が変動しやすい薬です。定期的に血液検査(PT-INR)を受けている方は、市販薬も含め事前に相談する習慣をつけておくと安心です。
市販薬を購入するときは、お薬手帳か処方薬のリストを持参して薬剤師に見せることをお勧めします。

薬と組み合わせたい非薬物療法
環境対策を組み合わせることで、薬の量を抑えながら症状をコントロールしやすくなります。
不織布マスクには花粉の吸入量を減らす効果があります。環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」には、複数の研究報告の一例として「不織布マスクで花粉吸入量を約7割カットできる」という数値が紹介されています。ただし同マニュアルはこの数値を断定しているわけではなく、「様々な研究報告の一つ」として挙げているに過ぎません。正しいサイズで、隙間なく着用することが前提です。帰宅後に玄関前でコートを払い、洗顔・うがいをする習慣を作ると、室内に持ち込む花粉量を減らせます。
鼻うがい(ハナクリーン等の専用キット)は、鼻腔に付着した花粉を物理的に洗い流せます。やり方を誤ると耳に水が入るリスクがあるため、専用キットの説明書に従ってください。
空気清浄機は室内花粉の低減に有効です。フィルターの定期交換が効果の維持に重要で、洗濯物の外干しを避けることも室内への花粉持ち込みを抑えられます。
→花粉症対策グッズおすすめ|外出・室内別に本当に使えるものだけ紹介
介護家族が知るべき確認ポイントと受診の目安
受診を勧めるタイミング
次の状態が見られたら、早めにかかりつけ医に相談してください。
- 市販薬を使っても1週間以上改善しない
- 眠気・ふらつきが強く、転倒が心配な状態になった
- 排尿の変化(出にくい・頻回になった)が現れた
- 鼻症状に加えて発熱・膿性鼻汁がある(副鼻腔炎の疑い)
- 認知症の症状が急に悪化した(薬の副作用の可能性がある)
(「本人が大丈夫と言ってるから」と市販薬を渡してしまう場面、介護の現場ではよくある話です。薬の副作用は本人が気づかないうちに進行することも多く、ふらつきや認知機能の変化は特に見落としやすいので、家族の観察が重要です)
何科に行けばいい?
最初の相談窓口はかかりつけ医(内科)が最も現実的です。複数の薬を処方されている場合、担当医が薬歴を一元管理しているため、飲み合わせのリスクをまとめて確認できます。
専門的な検査や治療が必要なら、耳鼻咽喉科・アレルギー科への紹介になることが多いです。根本治療として舌下免疫療法を検討したい場合も、耳鼻咽喉科で相談できます。
家族が事前に把握しておくと医師への相談がスムーズになるのは、現在服用中の薬のリスト(処方薬・市販薬すべて)、かかりつけ薬局が一箇所にまとまっているか、自己判断で市販薬を追加していないかの3点です。
よくある質問
高齢者にアレグラ(フェキソフェナジン)は使えるの?
第二世代の中でも眠気・抗コリン作用が少なく、高齢者に比較的使いやすいとされています。ただし腎機能が低下している場合、血中濃度が上昇しやすくなります。用量についてかかりつけ医か薬剤師に確認してから使うのが安心です。
クラリチンEXとアレグラFX、どちらがいい?
どちらも眠気の少ない第二世代ですが、腎機能の状態・他の薬との飲み合わせ・症状の強さによって選び方が変わります。一概に「こちらが上」とは言えないため、現在飲んでいる薬のリストを薬剤師に見せて相談するのが確実です。
花粉症の薬が認知症に影響することはある?
第一世代抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン・ジフェンヒドラミン等)は抗コリン作用により、認知機能の低下やせん妄を引き起こす可能性があります。認知症の診断がある方、または軽度認知障害(MCI)が疑われる方は、これらの成分が含まれる市販薬を避け、必ず医師に相談してください。
まとめ
高齢者の花粉症薬選びで避けてほしいのは、まず第一世代抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン等)です。認知機能低下・転倒・排尿困難のリスクがあります。代わりに第二世代(フェキソフェナジン・ロラタジン等)か点鼻ステロイド薬を基本にしてください。腎機能や基礎疾患の状況によって選べる薬が変わるため、現在の処方薬リストを持って薬局か診療所で確認するのが一番確実です。
「手軽だから」という理由だけで市販薬を選ぶのではなく、お薬手帳を持って薬局に行く。その一歩が高齢者の花粉症対策の出発点です。


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