こんにちは、編集部の恵方巻子(えほう まきこ)です。
ハンノキとオオバヤシャブシは、スギ花粉より早く2月から飛散が始まるカバノキ科の落葉樹です。くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどスギ花粉症と似た症状に加えて、リンゴや桃を食べると口や唇がかゆくなる「口腔アレルギー症候群(OAS)」を引き起こすことがあるのが特徴です。
「2月からもう鼻がおかしい」「スギシーズンより前から症状がある」という方は、ハンノキが原因である可能性があります。この記事では、飛散時期・症状・診断・治療・日常の予防対策を一通り解説します。症状が重い・長引く場合は必ず医療機関に相談してください。
ハンノキ・オオバヤシャブシとはどんな植物か
ハンノキ(Alnus japonica)とオオバヤシャブシ(Alnus sieboldiana、国際名:Alnus maximowiczii)は、ともにカバノキ科ハンノキ属に属する落葉樹です。
ハンノキは北海道・本州・四国・九州に広く分布しています。山間部ではなく、低地の湿地や河川沿い、水田周辺でよく見られる木です。「山に行かないと関係ない木」というイメージがあるかもしれませんが、川沿いを散歩するだけで十分近くに生えていることもあります。
オオバヤシャブシは山間の斜面や林道沿いに多く、関東以西から九州にかけて分布します。どちらも暖かくなり始めた早春に花粉を大量に放出し、非常に微細なため風に乗って広範囲に飛散します。
飛散時期と地域別ピーク
関東では2月下旬ごろからハンノキの飛散が始まります。環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」では、ハンノキ属の飛散時期を「2月下旬〜4月上旬」としており、スギ花粉のピーク(3月上旬〜中旬)と重なる時期もあります。症状が「スギシーズンより早く出る」と感じる方は要注意です。
(毎年「2月からなんで鼻がおかしいんだろう」と首をかしげていましたが、ハンノキが原因だったと気づいたのは血液検査を受けてからでした)
地域別の目安をまとめると次のようになります。
| 地域 | ハンノキ飛散開始 | ハンノキピーク | オオバヤシャブシ飛散開始 | オオバヤシャブシピーク |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 1月下旬〜2月上旬 | 2月中旬〜下旬 | 2月上旬〜中旬 | 2月下旬〜3月上旬 |
| 東北 | 2月中旬〜下旬 | 2月下旬〜3月上旬 | 2月下旬〜3月上旬 | 3月上旬〜中旬 |
| 関東・中部 | 2月下旬〜3月上旬 | 3月上旬〜中旬 | 3月上旬〜中旬 | 3月中旬〜下旬 |
| 関西・中国 | 3月上旬〜中旬 | 3月中旬〜下旬 | 3月中旬〜下旬 | 3月下旬〜4月上旬 |
| 四国・九州 | 3月中旬〜下旬 | 3月下旬〜4月上旬 | 3月下旬〜4月上旬 | 4月上旬〜中旬 |
年によって飛散量や時期は変動します。地域の花粉予報をこまめに確認しながら準備するのが現実的です。
→2026年 花粉カレンダー完全版|地域別・花粉の種類別に飛散時期・ピーク・終息を解説

主な症状:鼻・目の症状に加えて口腔アレルギー症候群(OAS)に注意
ハンノキ・オオバヤシャブシ花粉症の基本的な症状は、スギ・ヒノキと同じです。
- くしゃみ・鼻水が連続して出る
- 鼻づまり(特に朝)
- 目のかゆみ・充血
この花粉症に特有な点として、口腔アレルギー症候群(OAS)の合併があります。
ハンノキのアレルゲン「Aln g 1」はPR-10タンパク質ファミリーに属します。このタンパク質はリンゴ・桃・さくらんぼ・洋梨・大豆・ヘーゼルナッツなどにも含まれており、構造が似ているため免疫系が「花粉と同じもの」と誤って反応することがあります。
OASの症状は食後数分以内に現れることが多く、口・唇・のどのかゆみや軽い腫れが典型的です。多くは短時間で治まりますが、次の症状が出たらすぐに受診してください。
- のどや唇の腫れが広がる
- 呼吸がしにくくなる
- じんましんや全身症状が出る
これらはアナフィラキシーの可能性があり、緊急対応が必要です。
→花粉症で口の中がかゆい・喉がイガイガする理由|口腔アレルギー症候群(OAS)の原因・食品一覧・対処法
スギ花粉症との関係:なぜ両方に反応することがあるのか
「スギ花粉症があるとハンノキにも反応しやすい」と聞いたことがある方も多いと思います。ただしこの仕組みは誤解されやすいので整理します。
ハンノキはカバノキ科、スギはヒノキ科(Cupressaceae)と、植物の分類上は別の科です。スギの主要アレルゲンはCry j 1・Cry j 2ですが、ハンノキのAln g 1とは異なるタンパク質グループに属するため、単純な交差反応は起きにくいとされています。
それでも両方に症状が出るケースがある主な理由は次の2つです。
多感作:スギとハンノキの両方に、それぞれ独立して感作している状態。複数の花粉に同時に反応する方は珍しくありません。
pan-アレルゲン(プロフィリン等)による交差反応:複数の花粉・食物に共通して含まれるタンパク質への反応が、複数の花粉症状として出ることがあります。
「スギシーズンより早くから症状が出る」「スギが終わっても症状が続く」という方は、ハンノキへの感作も疑い、血液検査で確認してみてください。

アレルギー検査での確認方法
血清特異的IgE検査(血液検査)
ハンノキ・オオバヤシャブシ・スギ、そしてOASに関係するリンゴ・桃などの特異的IgEをまとめて測定できます。医師が必要と判断した場合は保険適用となります(診療報酬D014 特異的IgE抗体検査)。13項目を超える検査は一部自己負担になることがあるため、受診前に医療機関へ確認しておくと安心です。
(「とりあえず全部調べてほしい」と伝えると項目数が増えて自費部分が発生することも。「どの花粉と食材を調べるか」を医師と事前に話し合っておくと、必要な情報をコストを抑えながら得やすくなります)
皮膚プリックテスト
専門医が実施し、即日で即時型反応を確認できます。実施できる医療機関は限られていますが、より詳細なアレルゲンプロファイルが確認できます。
→アレルギー血液検査の結果の見方完全ガイド|クラス・数値・IgE値の意味をわかりやすく解説
治療の選択肢(市販薬・処方薬)
薬物治療の基本はスギ・ヒノキ花粉症と同じです。
抗ヒスタミン薬(内服)
くしゃみ・鼻水・かゆみに有効。第1世代(ジフェンヒドラミン等)は眠気が出やすいため、第2世代(ロラタジン・フェキソフェナジン・ビラスチン等)が日常使いには向いています。
点鼻ステロイド薬
フルチカゾン・ベクロメタゾン等。鼻炎症状全般に効果が高く、1日1〜2回の噴霧で使います。血管収縮系の点鼻薬と異なり、依存性のリスクが低い点も特徴です。
抗アレルギー点眼薬(ケトチフェン等)
目のかゆみ・充血に有効。ドラッグストアで購入できるタイプもあります。
処方薬・免疫療法
症状が中等度〜重症の場合、抗ロイコトリエン薬の追加や、アレルゲン免疫療法を専門医と相談することになります。
いずれも用量・使用期間は添付文書または薬剤師・医師に確認してください。
OAS発症時の食事の考え方
OASが疑われる食材は、症状が出た時点でいったん食べるのを中止します。
加熱処理(煮る・焼く)はPR-10タンパク質を変性させる効果があり、リンゴや桃は加熱後に症状が出にくくなることがあります。缶詰・ジャム・コンポートなど加熱加工済みの製品も比較的安全なケースが多いですが、個人差があります。
加熱食品を試す際も、初回は少量から始めて症状の有無を確認してください。食物アレルギーへの対処は必ず医師の指導のもとで行ってください。
日常生活での予防対策
マスクと目の保護
一般的なマスクでも花粉の体内への取り込み量を大幅に減らせます。環境省「花粉症環境保健マニュアル」によると、不織布マスクの着用で花粉の吸入量が約1/3〜1/6に減るとされています。N95相当のマスクや花粉対応ゴーグル・メガネを組み合わせるとより効果的です。
外出タイミングの工夫
花粉は一般的に午前中から飛散が始まり、昼前後から午後にかけてピークを迎えます(夕方には減少傾向)。環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」(P.10)でも同様の傾向が確認されています。天気・気温・風向きによって日々大きく変動するため、時間帯だけで判断するのは禁物です。
(「この時間なら花粉が少ない」という情報を見かけることがありますが、実際は当日の気象条件次第で変わります。外出前に花粉予報アプリで確認する習慣をつける方が確実です)
帰宅後のルーティン
- 玄関で上着や荷物を軽くはたき、すぐ洗濯機へ
- 帰宅後すぐに洗顔・手洗い
- 花粉の多い日の洗濯物は室内干しを基本に
- 布団やカーテンはHEPAフィルター搭載の掃除機で定期的に吸引
受診の目安
軽度:くしゃみ・鼻水のみで生活への支障が少ない場合は、市販薬と生活改善で様子を見ることができます。
中等度:目の症状が強い、眠れない、仕事や学業に影響が出る場合は耳鼻科・内科・アレルギー科に相談してください。
重症・OAS合併:口やのどの腫れ、呼吸困難、全身症状が出たらすぐに受診してください。アナフィラキシーの可能性があります。
まとめ
ハンノキとオオバヤシャブシは、スギ花粉より早い時期から飛散し、かつ口腔アレルギー症候群(OAS)という合併症を持つ花粉です。スギ花粉より前から症状が始まっている、またはリンゴや桃を食べると口がかゆくなるという方は、一度血液検査で確認することを考えてみてください。
症状が続く・悪化する場合は自己判断だけで対処せず、耳鼻科やアレルギー科を受診してください。
よくある質問
ハンノキとスギ花粉症は同時に発症するの?
スギ(ヒノキ科)とハンノキ(カバノキ科)は植物の分類が異なり、アレルゲンも別のタンパク質グループです。ただし、両方のアレルゲンに独立して感作している「多感作」や、pan-アレルゲン(プロフィリン等)による交差反応が起きているケースでは、両方の症状が重なることがあります。
OASが出たら何を食べれば安全なの?
症状が出た食材はいったん控えます。加熱した果物(煮りんご・缶詰の桃など)は症状が出にくくなることがありますが、個人差があります。再挑戦は少量から始め、必ず医師の指導のもとで行ってください。
市販の花粉症薬はハンノキ花粉症にも効く?
抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイド薬は基本的に有効です。OASの症状(口・のどのかゆみ)には内服薬の効果が限定的な場合もあります。症状が長引く・強い場合は処方薬や免疫療法の検討を医師に相談してください。
検査は保険が使えるの?
医師が必要と判断した場合、血液検査(特異的IgE)は保険適用されます(診療報酬D014 特異的IgE抗体検査)。13項目を超えると一部自己負担になることがあるため、受診前に医療機関へ確認しておくと安心です。
加熱したリンゴは完全に安全なの?
加熱でアレルゲンが失活しやすくなる場合がありますが、反応の程度には個人差があります。「完全に安全」とは言い切れないため、初めて試す際は少量から始め、症状が出たらすぐに中止してください。
症状が重い・長引くと感じたら、早めに医療機関へ相談してくださいね。


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